くも膜下出血(SAH)の原因と リスクについて

くも膜下出血(SAH)の原因とリスクについて

くも膜下出血とは

くも膜下出血は突然の激しい頭痛、あるいは意識障害で発症し、多くはそれに悪心・嘔吐を伴うものです。中には痛みが軽度のこともあり、診断に難渋する例もありますが、典型的にはこの時の頭痛は「今までに経験したことのないような」、「雷に打たれたような」、「バットで殴られたような」という風に例えられるほどの痛みであり、頭痛の発症時刻を明確に答えることができるほど突然であると言われています。

このくも膜下出血について説明する前に、くも膜とは何なのかわかりにくい方の為にまずは簡単に頭の解剖について説明します。
頭の皮膚から脳の実質までの間にはいくつかの構造物があり、その順番は表面から頭の皮膚→骨膜→頭蓋骨→硬膜→くも膜→軟膜→脳実質となります。
このように脳に到達するまでに何層にも覆われているのですが、この内のくも膜の下の血管が破綻し、出血が起きることをくも膜下出血と言います。くも膜という組織は柔らかく、その出血は急速に広まり、上で述べたような突然の激しい頭痛や、意識障害、悪心・嘔吐などの症状をきたします。
転帰としては、社会復帰できる方、重症後遺症を残す方、亡くなられる方がそれぞれ約1/3とされ、予後は非常に悪い疾患の一つであるとされています。そのため、これらの症状がみられたらすぐに病院、特に脳卒中を扱っている病院に受診し、迅速な診断・治療を受ける必要があります。

原因

くも膜下出血をきたす原因としては、最も多いもので脳動脈瘤という頭の血管の”こぶ”の破裂があり全体の80%以上を占めています。ほとんどが動脈瘤によるものということですね。

その他の原因としては脳動静脈奇形や、もやもや病といった頭の血管の異常によるもの、脳動脈解離や頭部外傷によるものなど様々なものが挙げられます。
ここでは、一番の原因である脳動脈瘤について取り上げますが、破裂の危険因子として以下のものが指摘されています。

 

大きさ5-7mm以上、特に10mm以上
部位脳底動脈先端部、前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分枝部など
形状不整形、多房性、blebを伴うもの、dome/neck比が大きいもの
複数あるもの
人種日本、フィンランド
合併疾患・習慣高血圧、喫煙、飲酒(1週間に150g以上の飲酒)
くも膜下出血の有無くも膜下出血をきたした動脈瘤に合併したもの
家族歴一親等以内の脳動脈瘤保有者の家族歴

なお、5mm以下の未破裂脳動脈瘤を保有する方では、50歳未満、4mm以上、高血圧の既往、多発性が有意な破裂の危険因子となります。

その他の要因との関連

心臓の病気や糖尿病などが持病にある方は、くも膜下出血との関連が気になると思いますが、コレステロール値、心疾患、糖尿病、ヘマクトリット値(血液の中を赤血球がどれだけ占めるか)は関連しないとされています。
また、喫煙者や高血圧の方では太っている方より痩せている方の方がくも膜下出血のリスクが増大したとの報告もあります。

まとめ

くも膜下出血のうち、80%以上とほとんどが脳動脈瘤の破裂によります。
関連としては、人種、喫煙・過度の飲酒習慣(痩せている方は特にリスク増大)がありますが、心疾患や、糖尿病、コレステロール値は関連しないと言われています。